女性が知らない男の怠惰。

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「検察側の罪人」を観た。

最初から最後まで、一定の緊張感を保ちながら、役者さんたちの演技に釘付けになれた2時間でした。
演技なのだけれど、演技しているように見えませんでした。
TVでよいか・・・と考える方もいると思いますが、これは映画館のスクリーンで、暗闇の中の雰囲気を味わい、集中して鑑賞されることを強くおすすめします。

ここからは、ネタバレを含みますので、未見の方はご注意を。

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 公式サイトに書いてあり、なるほど・・・と思ったのですが、ファーストシーンの新人検事研修のシーン、最上が「バカ!」とアクセントをつけたのは原田監督と木村拓哉しか知らないサプライズだったのですね。
驚く新人検事たちの中で、沖野(二宮和也)は怯まず、じっと最上を見つめている。
木村拓哉二宮和也の競演の始まり・・・

この舞台裏を知っただけで、もう1度観てみようかな、という気持ちに。

富貴晴美さんの音楽。メロディを覚えて映画館を出る種類の映画音楽ではないのですが、しっかりと物語に寄り添っている、邪魔をせず、エンドクレジットで物語の余韻と共に気持ちよく「あぁ、確かにこんな感じで音楽が鳴っていた」と感じる音楽でした。


中盤以降、最上が自室でPCを見ているシーン、画面の白い光が、最上の顔に反射しているのですが、このシーンほど、スター・木村拓哉の顔が骸骨のように見えたことはありません。ただ疲れ、老け込んでしまった顔でなく、死という領域に踏み込んでしまった男の顔でした。

弓岡を撃つ銃の音。本当に重い重い音でした。震えを感じるくらいの。

 

個人的な不満や?は要所にあり、

オープニングの「検察側の罪人」というロゴのフォントが漫画の表紙に付けるようなフォントに違和感を感じ、
なぜ、都市のビル群が天地逆さまに表現されているのだろう?と考え、
最上の奥さんは、なぜ、二胡を弾いていて、エンドクレジットでも二胡が流れたのはなぜだったのだろう?と考えたり、
松倉を処理した後で、沖野の横を女(芦名星)が歩くかな?と思ったり。


それから、笑いについて・・・

レストランから、沖野と橘がラブホテルへと向かう切り替えのシーンで、ウエイトレスの女性が「そんなにやりたいか」と独り言を言います。
沖野が、隣室に入った時に、多すぎる程のSM道具を見て、引いた感じを出します。
最上が、娘のウィッグを「部屋にいる時はヘルメットははずせ」と言って「ウィッグだよ」というやり取りがあります。


細かい点なのですが、大きく映画の印象が変わる点となったシーンでした。重みのある作品なのに、エンタメ作品の顔をしてる印象を受けました。
TVサイズのキムタクとニノが浮かんでしまったシーンでした。

笑いをとるシーンなのですが、笑いはいらなかったと思います。実際、笑うところなんだろうなと思いましたが、笑えませんでしたから。
それくらい、この作品の題材・役者さんたちの演技・演出には緊張感があったからなのです

ピクリとも笑わなかった私は、最後まで自分を緊張させたまま、鑑賞したかったのです。

 

この映画に突っ込みを入れたくなる人は多数いるのではと思います。

ただ、私のように、俳優さんの演技・音楽・雰囲気にもう1度酔ってみたいな、と思わせる作品でもあります。理屈を言ったらきりがないですが・・・

 

映画館を出た後、しばらく日常に戻りにくかったという事実。いや、あまり戻りたくなかった、もう少し味わっていたいと思えました。

 

作品に力があったのだと思います。

もう一度観ます。映画館で。