ハリソン・フォード =インディジョーンズ。
役者が役に出会う幸せな瞬間をずっと、観客は40年以上ずっと楽しませてもらった。
今回、その別れをスクリーンで見届けた。
総括して~
映画って、映画館で観る娯楽作って、インディジョーンズってこんなふうに楽しいものだったよね、いくら荒唐無稽な内容でも、そこにはちゃんと感動があるものだよね、と思わせてくれる作品だった。
ハリソン・フォード の表情・動きに釘付けになり、ジョン・ウィリアムズ から溢れ出た音楽を2時間以上浴びることができる。これだけ贅沢な時間を近年、映画館で味わえただろうか。
他の有名シリーズ作品と同様、観る人がどれだけ作品に親しんで来たか・どれだけ人生の傍にあったか・歩んできたかが、その感想に大いに影響するので、通常レビューが当てにならない種類の作品でもある。
劇場から出る時、後ろの高校生くらいの女性が、「あー楽しかった!」と言うのを聞いて、同意したと共に、嬉しい気分になった。
これから観る人には、待ちわびた大人の目線でなく、初めて映画館で映画に触れる子供のようにこの作品には触れてほしいと思った。
80年代、90年代だったら、インディ・ジョーンズ の5作目公開となれば、7月の夏休みロードショーとなっただろう。
2020年代 、現在において夏の目玉はトムクルーズ 主演「ミッションインポッシブル・デッドレコニング」である。
インディジョーンズが、一昔前の「ハムナプトラ 」と同じような境遇に立っていることに少し寂しさと時代の流れを感じる。シリーズに親しんで来た個人の熱は、明らかに強いのだけど、一般的にはもう、過去のシリーズと思われてしまっているのだろう。
物語の核に触れるネタバレ感想を箇条書き的に ↓
● ディズニーの映画であること。
オープニング、ディズニーのシンデレラ城のロゴに、長年のファンとして、違和感を感じ、ルーカスフィルム 、パラマウント のロゴに「これこれ!」となる。パラマウント のロゴがシリーズお約束のオーバーラップ導入がないことに、これはディズニーの映画ですから、というメッセージを感じる。
この不満は、ラストのカットでも。
シリーズの最終カットが、黒い丸が閉じる形で終わる「アイリス・アウト 」(古いサイレント映画 やアニメなどで見られる)なのだ。
前4作は映像にクレジットがフェードしてくる表現だった。最後であることを明確にしたかったのだろうか?
にしても、黒い円の中でインディの手が伸びて帽子を引っ込める映像には、ミッキーやドナルドダックの手が伸びるディズニーアニメのラストを連想してしまった。
始まりと終わりで、ディズニーをしっかりと意識させる経営戦略なのでは?くらいの斜めな見方をしてしまう。
勢いよく帽子をとった後、マットの入隊をダイヤルを使って止めに行ったのかも・・・という想像も楽しいのだけど。
● アクションシーンと若返りCG
金がふんだんにかかったであろうアクションが多いが、何がどうなっているのかわかりにくい。わからないからハラハラしようがない。
オープニングの列車アクションは、シーンが夜で暗いこともあってなおさら。伝わったのは動きのスピード感のみ。
スピルバーグ の、トラック、トロッコ 、バイクetc…のチェイス シーンは、目で追うことができ、位置関係などもわかりやすかった。
このことは、ジョン・ウィリアムズ による音楽にも影響したと思う。
ムチを何かに巻き付け、インディが空中にターザンするお約束シーンがシリーズ中、初めてなかったように・・・
例えば、スピルバーグ 監督作「E.T.」では、自転車が弧を描きジャンプし、パトカーが弧を描きカーブを曲がるシーンにピッタリ音楽がシンクロ(それこそディズニーのミッキーマウジング)していたシーンがあったが、「運命のダイヤル」のアクションシーンの曲はシンクロというより、状況音楽の印象なのだ。
上映後、トゥクトゥク のチェイス シーンの曲を口ずさめる人がどれだけいるだろうか?
ジョン・ウィリアムズ はスピルバーグ の作品を、「スティー ブンの作品は元々、リズムがあって音楽が付けやすい」とインタビューで答えていたが、今回の作品、音楽が付けにくかったんじゃないかな・・・と想像してしまった。
前述した、「レイダース」のトラック、「魔宮の伝説」のトロッコ 、最後の聖戦のバイク、戦車・・・これらには全て映像と音楽のシンクロが感じられたのだから。
思うに、「運命のダイヤル」に限らず、最近の映画アクションシーンのスピード・カット割りが速くなりすぎて音楽的ではなくなってしまったのが原因かもしれない。スターウォーズ の新シリーズからもそれは感じた。
余談だが、絵に自信のある監督はあまりカメラを忙しく動かさないし、カットもパンパン変えないことを思い出した。キューブリック 、黒澤明 、北野武 、そしてスピルバーグ は絵を落ち着いて描く監督だ。
・お馴染み、インディジョーンズのテーマが高らかに劇中初めて流れるシーン。もっと他のタイミングはなかったのだろうか?
何をするわけでもない、”列車の上で走る”というだけで、このメロディの出番じゃないだろう、と感じた。
ハリソン・フォード の若返りCG技術が、違和感がないということで話題になっていたが、まだまだ違和感は感じた。自然ではないと思う。人間の視覚はそれだけ精巧な創り。まだまだコンピューターには騙されない。
● 古代から戻るところを観たかった。
最後の盛り上がりは本当に映画館で映画を観るという醍醐味に満ちていた。
ものすごい荒唐無稽・ハチャメチャ。だって、古代にタイムスリップしてしまうのだから。それを信じ込ませ楽しませてしまう力技。ハリウッド映画にしかできない。こうなったらノレるかノレないか。
ここまでやるんだったら、間に合うか間に合わないかのスリルの中で、未来へ戻るという”インディジョーンズなりのバックトゥザフューチャー”を、盛り上がりを観たかった。贅沢かな・・・
「もうすぐ入り口が閉じてしまう!」って台詞があったんだから、すでにこれだけ盛り込んでいるのだから、やってほしかったな。ベッドの上のインディにシーンが切り替わった時、ちょっとガッカリがあった。
● ハリソン・フォード の顔と、記憶に残ったシーン。
2時間以上、ずっとハリソン・フォード の顔に釘付け。飽きない。
80歳を過ぎた男の顔に釘付けなんて。それがスターの証なのだろうか。
一人の俳優が40年以上に渡り同じ役を演じたのだ。こちらも感慨深さを感じずに観ることができない。何某かの感情をハリソンのいろいろな表情に当て嵌めてしまう。
そういえば、お馴染み、半分笑って半分困っての苦笑いが今作ではなかったような?再見するから確認してみよう。
この作品で、印象に残ったシーンは2つ。もちろんCGの若返りハリソンではない。
1つめは、
現代には戻らないと、古代に残ることをヘレナに伝えるシーン。
もう、息子もいない、妻・マリオンも戻ってこない、そんな世界にいるよりもこの世界に残りたい。
近年のハリソンフォードの表情の中では複雑で悲しくて少し幸せそうでダントツだった。
2つめは、
↑ 1つめのシーンを経て、幸せは過去にではなく現在にある。というメッセージを感じたラスト。
マリオンとの再会シーン。プラト ニックで慎ましく美しいシーンだった。
キッチンに立つ2人を映した、ただそれだけのシーンなのに。
● ジョン・ウィリアムズ による音楽
スターウォーズ と同様に、ただ、映画に曲を付けた音楽でなく、物語を主人公と一緒に語る音楽を、今回も産み出してくれた。
フィービー・ウォーラー=ブリッジ 、演じるヘレナ。
今回の作品で、彼女のことを描いた「ヘレナのテーマ」は複雑かつ本当に美しい曲。
この曲を書いてもらえたフィービー・ウォーラー=ブリッジ は幸せな女優さんだと勝手に思う。
エンドクレジットではこの曲が短縮されずにフルで流れた。うれしかった
。前の方にチラチラ、スマホ 蛍が出現していたけども。
VIDEO www.youtube.com
そして私も、ジョン・ウィリアムズ の新曲を映画館のスピーカーで聴ける幸せを噛みしめている。
もう一つ、古代のことを描いた曲がある。モチーフともいうべきか。
VIDEO
古代のことを知らないと書けないのではないか?
古代のことなんて、その時代を生きたわけでないからわからない?
では、なぜ、聴く人が古代という印象を受けることができるのか?
やはり、ジョン・ウィリアムズ から溢れ出る曲には、大袈裟に言えば、長い歴史を辿ってきた人間の、遺伝子レベルにまで反応し訴えかける「 」が含まれている気がしてならない。
「 」は人によって様々だと思うから明記はしない。
恐竜なら・冒険なら・戦争なら・宇宙なら・悲しみなら・サメなら・魔法なら・・・
地球上の人間が「これだよね」と共感できるこれ以上ない一つをメロディに選び、言葉を超えて表現している。91歳を迎えた今でも。
天の才。
91歳の人間から産み出される新しいメロディがこんなに心待ちなんて。
エンドクレジット、白いフォントの「HARRISON FORD」と出るタイミングでお馴染みのテーマ、スタート部にタイミングが合っていたことに、スタッフの愛を感じた。
そしてその後、第二テーマのスタート部バッチリの場所で「MUSIC BY JOHN WILLIAMS」と出たことにも、シリーズの大功労者を労うスタッフの愛を感じずにはいられなかった。
ちなみに、今作のレイダース・マーチ(インディジョーンズのテーマ)は、老齢のインディを表すかのようにゆったり勇壮な雰囲気。
欲を言えば、エンドクレジットはメドレーで聴きたかったな。
フェード気味にあんなに大人しくでなく、高らかにインディジョーンズのメロディをもう一度鳴らして終わってほしかった。ジャカジャカジャン!と。
映画自体が若々しく振り切っていたのだから。
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